ちいさな旅後編
歩きだすと、この町自体がすごく古い町だという事に気づく。
そういやぁ「信長の野望」にも「高尾城」って出てくるくらいだもんな。
かなり香ばしい感じの定食屋。値段をみてビックリするようなお寿司屋。
どれも入ってみたいなって思わせる風情があったけど、残念な事にことごとく
「休業中」となっている。
10分ほど歩いたか。
(もうこれ以上歩いても仕方ないから引き返して寂しくマックでも食べよう。)
・・そう思った時、古びたお店が目に止った。
「ラーメン270円。ミソラーメン350円。」
東京っ子には信じられないような数字が目に飛び込んでくる。
古びたガラスケイスに飾られているラーメンの見本は、明らかにホコリをかぶり、
ところどころ変色していた。
(あやしすぎる・・・。)
俺は猛烈にわくわくしていた。(入ってみてぇ)
そう思うや否や、反射的に店に飛び込んだ。
・・・ガラン。薄暗い店内は少しヒンヤリした感じがした。
先客はひとりもおらず。
15畳はあるであろう無駄に広い店内に、ぽつんとひとり。
腰の曲がったおばあちゃんがいるだけだった。
俺は、カウンターに腰を下ろした。
ラーメンは流石に怖すぎるので、ビールと肉野菜定食を注文する。
おばあちゃんが冷蔵庫から「ひじきの煮物」らしき物体を取り出し、黙って俺の前に置いた。
お通しか!?・・・おそるおそる箸をつけてみる。
「ぐぇっっ!!」言葉にはあらわし難い味がした。
思わず無言になる俺。
店内には、20年以上前のものと思われる、ラジオの音だけが景気良く流れていた。
しばらくして、肉野菜定食が俺の前に差し出された。
後悔の念に駆られながらも箸をつける。
・・・・・・・う、うまい?いやむしろ味平ばり(たとえが古いね)に「うんめぇ」
って感じかも知れない。かなり不思議な味がするのだが、これがまた猛烈にうまい。
10分ほどで完食し、おばあちゃんに話しかけてみた。
俺「オカーサン一人でやってるの?」
「そう、なにもしないとボケちゃうから趣味でやっているのよ。」
なるほどなるほど。利益を考えていないからこんなリーズナブルな値段でやって
いられるんだね。思わぬ良い店を発見して、すげく嬉しかったなぁ。
一服していると、突然、土砂ブリの雨。さっきまで晴れていたとは思えないほど
の降りっぷり。さすが高尾、つええよ。
「カサを持っていきなされ、後で返してくれれば良いから。」
おばあちゃんにそういわれてちょっとホロっときた。
だが、俺が次に高尾に来るのは何ヶ月後かわからない。
申し訳ないので、結局お断りした。気持ちだけが本当に嬉しかった。
俺は土砂ブリの中、カサもささず駅に向かって走った。
後は、家に帰ってボーッとしてただけだけど、探検してよかった。
良い休日になりました。


